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審査員 選評

林 義勝 さん

写真家

第一回目の受賞者である矢野さんのいのししの本が増刷、今回の応募者数も増加していることから、写真絵本大賞に注目が集まっているように思います。全体的な概要としては、普遍的なテーマや自ら手作りで作った創造性の高い作品など、バリエーションに富み、興味深く拝見させていただきました。上位入賞作品はそれぞれ素晴らしい内容で、選評はぎりぎりまで悩みました。優れた観察力、小動物へのやさしいまなざしなど力作ばかり。写真は“世界共通語”。視覚による言語です。写真絵本は、良い写真であれば受け入れられるわけではなく、時代性が関わってきます。写真を見た時に心が癒されたり、このコロナ禍の今、そういう時代性も大事。今井さんの作品は全体の構成力、一枚一枚の写真の完成度の高さ。そして、ご自身が最後で何を伝えたいかがわかる。非常に明確であった。どれも甲乙つけがたい。昨今、人と人との交流が簡素化されている中、写真絵本は写真を介して感動を共有し、長くその思いを伝えるメディアになると確信しています。


葉山 真理 さん

作家、脚本家、作詞家

自然に生きる野生動物の生態を観察した作品。日常生活を独自の視点で切り取った作品。環境問題を掘り下げた社会的な作品。どれも素晴らしい感性で仕上げられた力作ぞろいでした。わたしは言葉を生業としているので、その視点で拝見しました。写真だけを見れば本当に素晴らしいのですが、惜しむらくは言葉が抜けていたり、写真と言葉が合っていなかったり。いくら写真がよくても、写真絵本大賞なので、言葉と写真が相乗効果になっていないと成立しない。審査を通じて教訓が多かった。受賞された方もそうでなかった方も、今回の結果を受けて終わりではなく、これからも作品を作り続けてほしい。


木村 葉子 さん

毎日小学生新聞編集長

編集長になったばかりのひよっこ編集長。初めての大役。「自分の好きな作品を楽しみながら選べばいい。もし書店に並んでいたら、お金を払ってでも買いたいものを選べばいいんだよ」と審査員の林さん、葉山さんからアドバイスを受けた。「こどもたちが一人はもちろん友達やご家族、いろいろな方と楽しめる作品を選ぼう」と、私の中で基準を設けさせていただきました。新聞社に勤めているので、一枚の写真が100行の文章に勝る。瞬間瞬間を切り取る。事実を見つめる。その姿勢や努力は素晴らしい。改めてかんじさせていただいた。その中で一目ぼれをしたのが、今回毎日新聞社賞を授与した「てのひらのお稲荷さん」。ご家族と一緒に、祖父母と「昔はこうだったんだよ」とお話が広がる、想像が膨らんでいく。写真の世界から飛び出して読んだ人それぞれが自分の物語を紡いでいけると思った。